PRODUCTION NOTESプロダクションノート

場面写真

企画の成り立ち

 2018年4月期に連続ドラマとして放送されて、大きな話題を集めた「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)。その発端となったのは、2016年末OAの関東ローカルの同名単発ドラマ。若手製作陣によるトライアル企画に際して、当時アシスタントプロデューサーだった貴島彩理プロデューサーが提出したのが「おっさんずラブ(仮)」。卓越した書き手で大学の先輩でもある脚本家・徳尾浩司に相談する中、「恋愛だけのドラマが減っている現代だからこそ、真正面から、2000年代の月9みたいな王道恋愛ドラマを作りたいと思ったんです」と貴島P。タイトルどおりおっさんたちのラブではありながら、目指したのはあくまで純粋な恋愛ドラマ。キャスティングにおいてもチャーミングな魅力がある一方、何より演技派の田中圭と吉田鋼太郎が起用された。田中が演じるのは、モテないポンコツダメ男の春田創一。そして吉田が演じるのは、そんな春田に恋に落ち、ある日突然「好きです」と告白する、上司の黒澤武蔵。田中も吉田も、ともに映画・TVドラマ・舞台と出演作が絶えない人気俳優だが、そんな両名も過去に演じたことが無い超個性的なキャラクターとストーリーが話題となった。
 この単発ドラマの反響を受け、翌々年に“土曜ナイトドラマ”枠で連続ドラマ化。「連続ドラマになることで、より恋愛の部分は掘り下げていけるなと思いました」と徳尾。単発ドラマから続投となった田中と吉田と、連続ドラマから新たに林遣都を迎え、笑えるけれどどこか切ない、前代未聞の“おっさんの三角関係”ストーリーが描かれた。単発ドラマ、連続ドラマ、今作でも演出を務める瑠東東一郎監督は、「最初にタイトルだけ見て、すごい話が来たな!と(笑)。ナイーブなテーマでもあるけれど、突き抜けた面白さをピュアに追求することが一番真摯に向き合うことにもなると思って臨みました」。滑稽なまでにピュアで、それだけに笑えてキュンともさせられて胸を打たれる恋愛ドラマ。異色にして王道で、今の時代では新機軸。こうして生まれた「おっさんずラブ」が、エンタテインメント界に旋風を巻き起こすこととなった。
場面写真

反響と映画化

 連続ドラマの人気の火付け役となったのは、SNSだった。放送中からネットで注目を集め反響が徐々に広がり、第6話・第7話ではなんとそれぞれTwitterの世界トレンド第1位を獲得。そして放送終了後も、最終話(第7話)の1週間後のOA時刻に、実際には存在しないはずの第8話の妄想実況ツイートがファンの間で繰り広げられ、「おっさんずラブ」のワードが同日から翌日にかけてのトレンド1位に。また、公式インスタグラムのフォロワー数は現在までに39万人を獲得しており、春田創一(田中圭)の写真を黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が掲載する形態の公式“裏”アカウント〈武蔵の部屋〉は“表”の上をいく47万5000フォローを突破(2019年7月22日現在)。
さらに第35回ユーキャン新語・流行語大賞のトップ10にも選ばれ、第22回日刊スポーツ・ドラマグンプリ作品賞、第12回コンフィデンスアワード・ドラマ賞作品賞、第97回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞、東京ドラマアウォード2018連続ドラマ部門グランプリ、第45回放送文化基金賞テレビドラマ番組部門優秀賞など、数々の作品賞や俳優賞も受賞している。
 最終回を迎えても熱が冷めやらないどころか、終了後にこそ一大ブームとなっていた中、実現したのが待望の劇場版。2018年12月7日の映画化決定の発表に際して春田役の田中は、「お会いする人お会いする人に、続編の話を振られては、ずっと“ないです!”と答えていたのですが、すみません。“ありました!!”(笑)」とコメント。これもまた本当の話で、キャスト・スタッフともに連続ドラマで完全燃焼していた中で劇場版が決まったのも、ファンの愛情と熱量あってこそのもの。“ラブが、とまらない。”という映画のキャッチコピー同様に、ファンのラブもとまらなかった。
場面写真

テーマ

 完結編となる劇場版で描かれるのは、連続ドラマの1年後。最終回のその後を描くというのは早い段階から決まっていた中で、何をテーマにしていくのかというのは製作陣も頭を悩ませたところ。「連続ドラマのラストで結婚という言葉が出てきましたが、結婚=家族になるということでもあって、好きという気持ちだけでは乗り越えていけない部分がある。加えて人は誰かのパートナーである前に、1人の人間。自分が何をしたいのか、昔どんな夢を持っていたのか、仕事に就いて、歳を重ねて、忙しい日々を過ごす中で、いつのまにか忘れてしまう事も多い。けれど、大人になっても夢を持ち続けていたら素敵だし、再発見することもある。そんな時、背中を押しあえる関係を恋人・友人・家族と築けていけたらいいなと」(貴島P)。
 そこから導き出されたテーマは、“夢と家族”。「10代、20代の頃の何になりたいかっていう夢ではなく、仕事人としてのこれからの夢と、一方で好きな人と暮らしていくという家族の問題。そこにたどり着いて、今回のテーマが決まったんです。夢と家族、どちらかだけではなく、どちらも手に入れて幸せになろうとするときにはどういう葛藤があるだろうと物語を考えていきました」(脚本・徳尾)。
「アクションや爆発もありますが(笑)、やりたかったことはすごく地味な当たり前のことで、普通の話でいいんじゃないかというところに最終的に落ち着きました」(貴島P)。“夢と家族”というテーマは春田や牧凌太(林遣都)だけでなく、黒澤や武川政宗(眞島秀和)、荒井ちず(内田理央)、西園寺蝶子(大塚寧々)や栗林歌麻呂(金子大地)、瀬川舞香(伊藤修子)や荒井鉄平(児嶋一哉)にも通じるもの。それぞれの今とこれからにも注目だ。
場面写真

新キャスト

 これまでの三角関係から広がりを見せて、なんと五角関係のラブ・バトルロワイアルが描かれる劇場版。その一角となる天空不動産本社の新プロジェクトリーダー・狸穴迅と東京第二営業所の新入社員・山田ジャスティスをそれぞれ演じているのが、沢村一樹と志尊淳だ。「沢村さんには『おっさんずラブ』の世界を楽しんでもらってそこから何が生まれるのか、僕も楽しみにしていました。実際、本当に素晴らしかったです。志尊くんは最初かなり緊張していたみたいなんですが、それを見ていた田中圭くんが初日に食事会を開いてくれて、そこで話してからガラッと芝居が変わりました」と瑠東監督。
 その食事会で話したことというのは、瑠東も田中も『おっさんずラブ』においては特に意識していることで、それは生身で演じるということ。役づくりをして完全にキャラクターに入り込んでしまうと、その時々の生の感情を瞬時に返せなくなってしまう。役というフィルターは通しながらも自分自身を解放して、嘘なく演じる。そこに現れる本当が人を笑わせも泣かせもするというのが、瑠東と田中が本作で目指していること。それが台本からさらに膨らむ『おっさんずラブ』の面白さにも繋がっているが、それだけに沢村も志尊も楽しさがあった一方、その場の芝居で何が仕掛けられるか、どう返していけるのか戦々恐々でもあったそう。田中、吉田、林も「まるで連続ドラマの時からずっといたような空気感だった」と語る新メンバーのふたり。果たしてどんなラブ・バトルロワイアルとそれぞれの物語が展開されるのかは、映画を観てのお楽しみだ。
場面写真

撮影

 本編の撮影がスタートしたのは、2019年3月末。映画冒頭の春田の香港のマンションシーンから撮影が始まり、以降、都内で連続ドラマからお馴染みの天空不動産・東京第二営業所のセット撮影、神奈川県の相模湖で、春田と牧を中心に登場人物たちの切ない人間ドラマが繰り広げられる花火大会シーンの撮影が行われたほか、群馬県の高崎市では、映画ならではの見どころとなっているクライマックスの爆破シーンを撮影。そしてわずか2日間の強行スケジュールで撮影された香港ロケを経て、4月末に、まさに五角関係の5人がサウナで一堂に会してしまうシーンでアップを迎えた。1か月間の撮影を振り返って、「とてもしんどかったですけど、楽しかったです。全員が持てる力を出し切っていると思うので、何の後悔もないですね」と田中。また吉田は、「圭が基本的に何をやっても受けてくれて、何をやってもこっちがやったことをさらに面白くしてくれる。だからみんないろいろやれるんだと思います」。そして林も、「連続ドラマの最初の頃は自分の芝居をぶつけるっていう感覚だったんですけど、今回は初めから圭くんに信頼を置いているので、何かちょっと違ってもいいかなと思いながらいろいろ試してじっくり作っていくことができました」とコメント。オールアップのサウナのシーンも抱腹絶倒の掛け合いとなっている。
 とにかく笑いが絶えない現場。それはもちろんキャストもスタッフも楽しみながら取り組んでいるからというのもあるが、笑いが出るのが何より真剣に取り組んでいる証し。「『おっさんずラブ』というのは恋愛にしろ仕事にしろ、ブレずに真っすぐ全力で向き合ってる人たちの話なので、あえてふざけようとすると成立しなくなる。俳優部の皆さんもまさにブレずに真っすぐ全力で向き合っていて、結果としてその姿が可愛らしくも面白くもあって、笑いも生まれるんですよね」と瑠東監督。キャスト・スタッフもファンも『おっさんずラブ』のそんなところにこそ惹きつけられるのかもしれない。
【撮影:2019年3月30日(土)〜4月28日(日)】
場面写真